なまこの生態

いつも見るなまこはすでに薄くスライスされていますよね…。なまこは一体どういう生き物なのでしょうか。
実は、見た目とは裏腹に、とてもデリケートでカワイイ生き物です。

能登なまこ
日本近海だけでも200を超える種類が生息するといわれるなまこ。しかし、食用になるのはごくわずかで、「能登なまこ」を含め一般的に店頭で販売されているのは「真なまこ」という種類のものです。動物学上の分類は、棘皮(きょくひ)動物門ナマコ網・楯手目・マナマコ科。少し難しいのですが、棘皮動物というのは、脊椎が無く外側にトゲを持つ動物のこと。ウニやヒトデも仲間です。

杉浦さんと能登なまこ
そのルックスからも想像できる通り、なまこはとてものんびりやさんです。住み家は岩礁や海中の砂地。海底をゆっくりと這ってエサである有機物を食べ、約3年で体長10~15センチほどに成長します。水温が低くなるほど動きは活発になりますが、それでも移動速度は毎分1~10センチ。動くなまこを見るためには、彼らをやさしく見守るおおらかな心が必要です。
動きは遅く、鋭い歯も猛毒も持たないなまこ。食物連鎖の激しい自然界で生きていけるのか?誰もが心配するところです。なまこは敵に襲われたり、刺激を受けたりすると肛門から内蔵を吐き出します。海でなまこを踏んでしまい、足に白い糸のようなネバネバしたものが付いて取るのに苦労した人もいるのは?そう、それが「キュビエ器官」と呼ばれるなまこの防衛技。魚のエラなどに絡み付いて、呼吸を止めるのです。吐き出した内臓は1~3ヶ月で元通りになります。ちなみになまこは体の一部を切られてもトカゲのようにすぐに再生します。この驚きの生命力も特徴です。

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なまこがもっと好きになる!?なまこミニコラム~なまこ生態編~
キュビエ器官の真実
「なまこの生態」のページでも触れたなまこの護身技、キュビエ器官についてもう少し詳しくご紹介しましょう。
実は、なまこが身の危険を感じた時に肛門から吐き出すものには2種類あります。1つは純粋な内蔵で、残りがキュビエ器官。
なまこのおしり
↑緊急事態発生~内臓が出現!!!!
食用なまこのほとんどがこの器官を持っておらず、私達が国内で遭遇するなまこの緊急事態で目にするのは内臓そのものを吐き出す姿なのです。逆に南の海などに棲む食用以外のなまこが吐き出すのはキュビエ器官。つまり、内蔵の種類が違うのです。でも、その効果は同じ。敵に絡まって相手の動きや呼吸を止めてしまいます。
なまこのように大らかな気持ちになれば、なまこの攻撃=内臓を吐き出す=「キュビる」と覚えても問題はないといえるでしょう。